クリルオイルは血管性認知障害を予防する

高齢になると、もの忘れや判断力の低下といった“認知機能の低下”が心配されますが、その原因のひとつに「血流が悪くなること(血管性認知障害)」があります。特に、脳の細い血管が傷ついたり、詰まったりすることで、記憶力などに影響が出ることが知られています。 今回の研究では、太平洋オキアミから抽出した油(クリルオイル)を使って、その油が脳の血管障害による認知機能の低下を抑える効果があるか、マウスを使って調べました。 モデルマウスの1グループには通常のエサを、別のグループにはクリルオイルを加えたエサを与え、記憶力や運動能力をテストした結果、クリルオイルを与えられたマウスは、脳の血流が良くなり、記憶力や運動能力の低下が抑えられていることが分かりました。また、脳の神経細胞の傷みも少なく、炎症を示す遺伝子の働きも正常なレベルに保たれていました。 この研究は、クリルオイルに含まれる栄養素が、脳の血流を改善し、認知機能の低下を防ぐ可能性があることを示しており、将来の認知症予防にも役立つかもしれません。
「New Emulsifying Oil Powder Extracted from Pacific Krill Protects against Vascular Cognitive Impairment in a Mouse Model of Cerebral Small Vessel Disease」
Shinshu Med J, 72⑶:169~182, 2024
Nanae ISHIDA 1、Hidetoshi YAMADA 2、Masamichi HIROSE 3、Eiichi TAIRA 4、Mitsuhiko YAMADA 5
1.信州大学医学部分子薬理学講座、岩手医科大学医学部薬理学教室
2.帝京科学大学生命環境科学部
3.特定医療法人仁誠会朝倉病院 内科
4.岩手医科大学医学部薬理学教室
5.信州大学医学部 分子薬理学教室