クリルオイルは糖尿病由来の肝障害を改善する

糖尿病によって起こる肝臓のトラブルは、実は最近とても注目されているテーマです。肝臓に障害が生じると、それがさらにインスリンの効きにくさを悪化させ、結果的に糖尿病を進行させてしまうことが分かっています。しかし残念ながら、こうした糖尿病性の肝障害を防ぐ方法は、あまり確立されていません。
今回の研究では、糖尿病を発症させたマウスにクリルオイルを与え、その効果を詳しく調べました。
糖尿病のマウスでは血糖値のコントロールが悪くなり、肝臓の酵素の数値(ALTやAST)が高くなるほか、肝臓そのものも傷んで脂肪がたまり、線維化が進むといった変化が起こります。ところがクリルオイルを与えたマウスでは、これらの悪化が抑えられ、肝臓の状態が大きく改善していました。さらに詳しくみると、クリルオイルは肝臓で発生する酸化ストレスや炎症をやわらげ、フェロプトーシスと呼ばれる細胞死の仕組みが進むのを防いでいたのです。これは、肝臓の細胞がサビつくようにダメージを受ける現象ですが、クリルオイルはその悪循環を断ち切る役割を果たしていました。
さらに、クリルオイルは肝臓が本来持っている「抗酸化のスイッチ」であるNRF2という仕組みを取り戻す手助けもしていました。つまり、ただ害を防ぐだけでなく、肝臓が自分の力で守る力も後押ししていたのです。
この研究から分かることは、クリルオイルが糖尿病によって起こる肝臓の障害を抑え、予防や改善につながる可能性があるということです。まだマウスでの実験ではありますが、将来的には糖尿病の合併症対策として新しい選択肢の一つになるかもしれません。
「Krill Oil Ameliorates Liver Injury in Diabetic Mice by Activating Antioxidant Capacity and Inhibiting Ferroptosis」
Journal of Oleo Science.2024;73(8):1069-1082.
Huali Meng 1.2、Jie Li 2、Yu Yang 2、Yan Zheng 1、Shue Wang 3、Xin Guo 1.2、Lei Du 1.2、Hao Wu 1.2
1.山東大学済南中央病院トランスレーショナル医学研究センター、中国
2.山東大学済魯医学院公衆衛生学院栄養食品衛生学科、中国
3.山東大学済魯医学院公衆衛生学院公衆衛生・予防医学実験センター、中国