クリルオイルが筋肉の代謝に変化をもたらす? ~エネルギーとたんぱく質の使われ方を調べた最新研究~
南極の海にすむオキアミという小さな甲殻類。そのオキアミからとれる油が「クリルオイル」です。
このオイルには、青魚などにも含まれるオメガ3脂肪酸(EPA・DHA)や、抗酸化物質として知られるアスタキサンチンが豊富に含まれています。
これらの成分が体の中でどのように働くのかを調べるため、ヒトの筋肉の細胞を使った研究が行われました。
「クリルオイル」と「別の油」を比べてみた
研究では、参加者に7週間、クリルオイルまたは別の油(アスタキサンチンを加えた高オレイン酸ひまわり油)をとってもらいました。
その前後で筋肉の細胞を採取し、糖や脂肪、たんぱく質のもととなるアミノ酸などがどのように使われているかを詳しく調べました。
脂肪とアミノ酸の使われ方が変化
クリルオイルをとった後の筋肉の細胞では、脂肪(オレイン酸)がエネルギーとして使われる量が増え、ロイシンというアミノ酸が細胞内により多く蓄えられていました。
一方で、糖(グルコース)の使われ方には大きな変化は見られませんでした。
また、脂肪を多く使うようになった変化は、血液中のLDL(悪玉コレステロール)との間に関係があることも分かりました。
試験管の中の細胞でも同じような傾向に
培養した筋肉の細胞をクリルオイルに直接さらす実験も行われました。
その結果、24時間という短い時間でも、糖や脂肪がエネルギーとして使われる量が増え、細胞の中で「エネルギーを作る動き」が活発になることが確かめられました。
遺伝子やたんぱく質の変化も
さらに詳しく調べると、代謝(エネルギーを作る仕組み)やカルシウムの働きに関わる遺伝子の動きに違いが見られました。
また、たんぱく質の分析では、クリルオイルをとった後の筋肉の細胞で「LDL受容体」と呼ばれるたんぱく質が増えていることが分かりました。
まとめ
この研究では、クリルオイルをとることで、ヒトの筋肉の細胞が脂肪やアミノ酸をより上手に使うようになることが確認されました。
糖の使われ方に変化は見られませんでしたが、脂肪やたんぱく質の代謝に関わるしくみに影響があることがわかり、筋肉のエネルギー利用を考える上で注目される結果といえます。
この記事はリンク先の文献を元に作成しています。
「Krill oil supplementation in vivo promotes increased fuel metabolism and protein synthesis in cultured human skeletal muscle cells」

